100万円前後の物件がゴロゴロある

駅から遠い物件は驚くほど安い

 私が競売で自宅を入手したのは5年ほど前のことだけど、売却基準価格は158万円だった。そこに20万円乗せて178万円で落札した。
 落札者は他の入札者の住所氏名や入札額を閲覧することができる。
 入札者は私を含め5名で、1名は不動産業者、他は地元の個人。私以外の個人入札者3名は皆買受可能価格(売却基準価格の8割)の125万円前後、不動産業者は売却基準価格での入札だった。
 この物件は、売却基準価格をまさに基準として入札されたと言える。

売却基準価格と落札額はかなり違うのが普通

 最近はサラリーマン大家とか、副業で不労所得とか流行っているようで、不動産業者でない個人による入札や落札がかなり多い。賃借に回せるような物件は、想定利回り、つまり月いくらで貸せるから何年で元を取れるかを計算して入札額が決まる。だいたい6~7年、つまり月5万で貸せるなら400万円で入札という具合だ。
 一方売却基準価格は不動産鑑定士が算出しで答申したものを裁判所が決定するのだけど、土地は路線価、建物は再調達価格×現価率が基本となる。
 売却基準価格と入札額の決定プロセスが全然違うため、落札額が売却基準価格の数倍なんてことは珍しくないし、逆に売却基準価格が高すぎて誰も入札しない物件も出てくる。

土地価格の決定方法

 路線価といって、鉄道や幹線道路ごとに基準価格が公示されていて、そこから補正を掛けていく。これは固定資産税の評価額を算出する方法と同じ。もちろん眺めがいいとか、近くにいい水場があるとか、静かな環境だとか、そんな田舎暮らしに求められる要素は一切考慮されない。
 だから、鉄道や幹線道路からの距離が大きくなると、非常に安くなる。 

建物価格の決定方法

 坪30万とか標準的な原価に延床面積を掛けた再調達価格に、耐用年数から築年数を引いた残年数を耐用年数で割った現価率を掛けるわけだけど、耐用年数を超えていれば現価率は1%と、タダ同然になる。一般的な木造住宅だと、耐用年数は25年で計算されるんだけど、普通40~50年は住むんじゃなかろうか。そうでなければ35年ローンなんて組めないし。
 さらに、競売市場修正という係数により4割引きになる。これは事前に内覧ができないとか、立ち退きに手間が掛かることを考慮した数字だけど、これはどんな物件も一律だ。
 1000万円の家も、結局築10年で360万円、築20年で120万円になる。
 一般的な感覚だとあと30年は住める家が、100万円台?

市街地の物件はそんなに安く落札できない

 かれこれ10回ほど入札しているけど、落札できたのは現在の自宅だけ。
 大抵は遥かななめ上を行く価格で落札されていた。一回だけ3万円差で次点になったことがあって、とても悔しかったけれど。
 前述のとおり売却基準価格はとても安く算定されるので、あってないようなもの。現実的には、ほとんど不動産市場より少々安い程度の価格で落札される。立ち退きトラブルのリスクを考えると、あまり割の合わないギャンブルだ。
 元々立ち退き交渉のノウハウを持つ中古住宅専門業者が薄利多売で仕入れる場となっているので、そんなにおいしい物件は滅多にない。そこに人件費を無視したサラリーマン大家志願者が加わるわけで、近年はレッドオーシャン化しているようだ。

田舎物件はおいしい

 一方不動産市場もないような地域の物件は、賃貸も転売も望めないから、入札するのは利益目的でなく自分が住もうとする人だけだ。
 差益が出ればいいという考えにならないから、できるだけ安く入札することになり買受可能価格が基準になってくる。売却基準価格の2割引きだから1000万円築20年の家は100万円を切る。
 自分の財布からお金が出て行っても、また戻ってくるあてがあるなら冷静な計算もできるけど、戻らないなら1円でも安く済ませたいと思うのが人情だ。
 こうして入札額は低位に張り付くことになり、楽々落札できるというわけ。